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2006年10月 1日 (日)

「地方の時代」映像祭(2)

(承前)

優秀賞の「NNNドキュメント06 カナリアの子供たち 検証・化学物質過敏症」(日本テレビ)は東京民放キー局久々の参加作品だ。東京も地方のひとつなのだが、キー局は当初は参加していたが次第に足が遠のいていた。会場に来る人も少ない。

久し振りのこの作品は力がこもっていた。子供たちのなかに化学物質過敏症が拡がっている。頭痛や不整脈、記憶障害などである。

 農村部ではヘリコプターによる有機リン農薬散布が原因といわれている。活性炭入りのマスクをつけて登校し、しばしば別行動せざるを得ない子供も増えてきた。群馬県ではヘリ散布自粛を要請した。だが、国は因果関係が100%立証されていないとして何等対策を講じようとしていない。番組では、取材困難といわれている過敏症に苦しむ何組もの親子を丹念に取材し、その実情をレポートして行政のありかたを問うドキュメンタリー(55分)。タイムリーで、すぐれた問題提起が光っていた。

賞には漏れたが、「自殺大国に潜む影」(新潟総合テレビ)も力作だった。新潟県の自殺率は際立って高く、中山間部の老人たちに集中している。その原因のひとつは、有機リン酸系薬剤の空中散布にあるという研究成果が出ている。日本の農業を支えてきた高齢者たちを襲ううつ病との関連が問題視されている。タブーの壁を越えながらの取材が光っている。

 優秀賞の「散華」については先日書いた。「「一億人の富士山スペシャル いつになったら 詩人 金子光晴」(山梨放送)は、完成度よりも制作意欲と大胆な手法が評価された。

 古来、日本を象徴する名山とされてきた富士山、しかし、詩人・金子光春はその富士を戦時中に疎開した山名湖畔で「糞面白くもない」と書いた。

それから60年、山麓にはいまでも演習地が広がりそれが観光化されているという転倒した現実がある。

 戦争非協力を貫いた金子光晴はなぜそう書いたのか、舞踏家・田中眠が金子の足跡をたどり、映像と朗読でその魂に迫り、いまの日本を問うドキュメンタリー(47分)。一億人のひとりを主張する田中眠を追う番組は、日本の現状を鮮やかに照射する。テレビの商業主義に媚びてない制作姿勢がさわやかだ。

 特別賞の「広島、長崎を伝えたい―ある市民ジャーナリストの軌跡―」(長崎放送)は、元ラジオディレクター伊藤明彦さん(69歳)を描いた。伊藤さんは、70年の退職後、アルバイトをしながら全国各地を訪ねて約1000人の被爆者の肉声をテープに記録した。そして8時間40分におよぶ被爆者の声を収録した音声作品のCDを製作、約700セットを全国の公共施設へ寄贈する活動を続けてきた。

 番組は、一市民ジャーナリスト伊藤さんの活動を記録し、被爆者たちの声を紹介しつつジャーナリストとはなにか?の課題にせまろうとする(48分)。制作はかつてグランプリも受賞したことのあるベテランディレクターだが、伊藤さんの活動に敬意を表した特別賞となった。(この項つづく)

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